ケイカル板とは、珪酸カルシウム板(ケイ酸カルシウム板・ケイ酸カルシウムボードなどとも呼ばれる)の略称の事じゃ。
建築関係の方々の間では、珪酸カルシウム板の事を略称のケイカル板もしくはケイカルボードと呼んでおる為、こちらの呼び名の方が認知度が高いのかもしれんのぉ。
尚、ケイカル板は、「消石灰(しょうせっかい)」「珪藻土(けいそうど)」「無石綿(ノンアスベスト)」などに水を加え練り合わせて生成されており、主に内装材や壁材として使用されている建築部材じゃ。
※石綿は古い大型施設の内装材として広く使用されていた建築資材でアスベスト問題として大きく話題となった資材です。無石綿はノンアスベストとも呼ばれております。
※Point!ケイカル板=珪酸カルシウム板の略称
外壁や内装などの壁材として使用される建築資材は多くの種類があるのぉ。
では、ケイカル板はいったいどのような場面で主に使用されておるのじゃろうか?
ここではケイカル板の特徴についてチェックしていくとしよう。
ケイカル板の主な特徴としては大きく分類すると、まず以下のような特徴及び特性を持つ点があげられる。
【ケイカル板の主な特徴・使用用途一覧】
☆加工が容易である(カッター加工・ねじうちなど)
☆耐火性に優れている(法廷不燃材)
☆安全性に優れている(1992年よりアスベストを含まない無石綿の使用義務化)
☆仕上げ材との相性が良い(下地材・補強材としての使用)
☆建築資材としての比重が軽く使用用途が広い
ケイカル版は上記のような特徴を持つ建築資材じゃが、中でも「加工が容易である」と言う点は実に大きなポイントじゃ。
近年の建築は全て工場で資材を加工し建築現場で組み立てるという建築手法が主体となっておる。
しかし、一般住宅の建築などの現場ではサイズの寸法が合わない場合などもまだまだ多くあり、現場で「切断・加工」が施せるという点はケイカル板の大きな利点と言っていいじゃろう。
また、ケイカル板は「法廷不燃材」である為、火災発生時を想定した「防火構造建築物」の建築資材として幅広い用途で使用されているのが現状じゃ。
※Point!ケイカル板は加工性・安全性・耐火性など建築資材としての利点が多い
結論から言ってしまえば、現在でもアスベストが含まれているケイカル板を使用していた建築物は多く存在しておる。
アスベストの健康被害の問題が広く認識されるようになり、大型の商業用施設などでは大きな問題として早急に改築が進められてきたのじゃがそれでも現実的に対応が遅れている建築物が多くあるのも事実という訳じゃ。
教育機関、特に小学校や中学校などの「体育館」や「校舎」に関しては、耐震基準の問題もあり政府の調査が入り対応されるようになったのじゃが、それでも全ての教育機関に関連する施設のアスベスト問題が全て解決されている訳ではないという訳じゃ。
尚、一般の戸建て住宅でも不燃材として火の回りの早い「ベランダの軒」や「屋根の軒下」などには石綿が配合されているケイカルボードが使用されていた時期もある。
築年数が経過している住宅にお住まいの方で不安がある場合は一度建築業者さんに確認してもらうと良いじゃろう。
石綿が含まれている製品を扱っていた職人さんは既に高齢のベテランの方に多い。
玄人職人であれば外観からも見分けられる場合もあるので一人親方などの職人さんに張り替えを依頼するのも良いじゃろう。
※Point!アスベストは身近に多く存在しているのが現状
自宅の外壁や軒裏、軒天に石綿が含まれているケイカル板が見つかった場合は交換してしまうのがベストじゃ。
日頃から家の修理を自分で行っているようなDIYが得意な方であれば、手順さえ把握しておけばホームセンターで石膏ボードを購入し自分で張り替えてしまう事もそれほど難しい作業ではないじゃろう。
※Point!張り替え程度ならDIYでも対応可能
アスベストで怖いのは「飛散」の可能性じゃが、ケイカル板は破損や亀裂などが生じない限り人体に大きな影響を及ぼすようなアスベストの飛散はまずおこらない。
但し、建築資材は耐用年数がある程度決まっており、年数の経過と共に破損や亀裂を発症する可能性も高まるので、屋根の塗り替えや外壁の塗装などのリフォーム工事などを行なう際に、合わせて交換してしまえば安心できるじゃろう。
ホームセンターやインターネットの建築資材を販売している通販サイト、また資料やカタログには、「防火認定」という表記がなされている製品が多くあるはずじゃ。
建築の入門者の方の場合は、「この防火認定っていったい何だろう?」と思われた方も多いかもしれんのぉ。
この防火認定とは、例えば「30分防火認定」とケイカルボードに表記されている場合。
このケースでは、この製品はそのまま「30分の遮熱性をもつ防火構造である」と認定された製品であることを表しておる。
同様に「45分準防火構造認定品」と表記されている場合は「45分の遮熱性をもつ準防火構造」である製品であることを表しておるという訳じゃ。
※Point!防火認定の表記はその製品の耐熱時間を示している
ケイカル板の防火認定の種類としては
●防火構造認定品
●準防火構造認定品
など一口にケイカル板と言っても様々なグレードのケイカル板があるので、用途に適したケイカル板を選択することが大切になります。
ケイカル板は建築資材の中でも不燃材としての性能が高く、その材質や特性を示す性能は「防火認定」を受けることで証明されます。
しかしこの防火認定。いったい誰が認定しているのでしょうか?
その答えは「国土交通省の大臣」です。建設省ではないのですね。
企業が新しい不燃材料となる建築資材を製品として開発した場合は、その製品が防火材料としての材質、性能を保持しているかどうか?について検査を受ける必要があるのです。
※Point!検査に合格すると国土交通省の認定製品となる
ケイカル板は、様々なグレードがある為、一口にケイカル板の実質的な防火性能を示すことはできない。
ここでは、一般的な指標としてケイカル板の不燃性能を見ていくとしよう。
まずここで覚えておくべきポイントは、ケイカル板は「防火材料」の中でも、最も基準の厳しい不燃材料に指定されている点じゃ。
※Point!ケイカル板は最も基準の厳しい不燃材料に指定されている
不燃材料とは、防火材料の基準の中で最も燃えにくい材質です。
但し、不燃材料としての認定を受けるケイカル板は「厚さ5ミリ以上の繊維混入のケイカル板」のみとなります。
不燃材料の基準としては、加熱開始後20分以上の時間において以下の条件を満たす事が必要です。
【加熱開始後20分間の不燃材の条件】
①燃焼しない
②変形・溶融・亀裂を生じない
③非難上、有害な煙やガスを発生しない
以上の条件を満たす建築資材であることが基本的な基準です。
防火材料には、前項の①~③の条件を満たす時間によって以下のように分別されております。
豆知識としてご参照下さい。
【防火材料の基準】
●不燃材料⇒加熱開始後20分以上①~③の全ての条件を満たす。
●準不燃材料⇒加熱開始後10分以上①~③の全ての条件を満たす。
●難燃材料⇒加熱開始後5分以上①~③の全ての条件を満たす。
不燃材であるケイカル板の防火性能は前項の防火材料の基準を見ても解る通り優秀な耐火性能を誇ることがわかるじゃろう。
尚、耐火性能は一般的な「フレキシブルボード等」の場合、製品の厚さや表面の塗装加工状態によっても変化してくる。
ケイカル板の購入を検討する場合は、使用用途に適している材料を選択することが重要になってくるという訳じゃ。
※Point!使用用途に適した資材を選択する
基本的にケイカルボードは加工制に優れておりカッターなどで簡単に加工・切断することが可能じゃ。(専用の切断工具があると便利)
個人で使用する場合は大き目のサイズで注文し、注文時に加工までしてもらうようにすると施工に失敗したときにも便利かもしれんのぉ。
大型のホームセンターなどでは、多くのメーカーの製品が置いてあるので一度「耐火性能」と「価格」を比較してみると良いじゃろう。
不燃材料の条件を満たす建築材料は、「厚さ5ミリ以上の繊維混入のケイカル板」という条件の他に
●建告(建設省告示)平12建告1400号
にて以下の材料が指定されておるので一度チェックしておくと良いじゃろう。
【建告の不燃材料の具体例一覧】
●コンクリート
●ねんが
●瓦
●陶磁品質タイル
●石綿スレート
●繊維強化セメント
●厚さ3ミリ以上のガラス繊維混入セメント板
●鉄鋼
●アルミニウム
●金属板
●ガラス
●モルタル
●しっくい
●厚さ12ミリ以上の石膏ボード
●ロックウール
●グラスウール板
ケイカル板と同様に不燃材に指定されている建築材料のひとつに「グラスウール」があります。
グラスウールは燃えにくいガラスを繊維状に加工した建築資材で住宅の壁材に広く使用されております。
熱を最も伝えにくい物質である「空気」を繊維内に閉じ込めることで熱の伝導を抑える働きがあります。
またガラスの特性でも腐食への強さという特徴を失っていない点もグラスウールの優れたポイントです。
※Point!空気を繊維内に取り込んだ不燃材がグラスウール
不燃材は数多くの国内メーカーが製造を行っております。
ケイカル板の製造、販売に関しては「三菱フレキシブルボード」とニチアスの「エコラックス」は長年幅広い人気を誇る製品のひとつです。
建築現場ではいずれも天井・内壁・軒下などで広く使用されているので見かけたことがある方も多いかもしれません。
ケイカル板は不燃材ではあることから耐火性能はもちろんですが、「耐衝撃性」・「耐水性」にも優れている点も大きな特徴です。
また表面に化粧を施した「化粧ケイカル板」も広く普及しております。
※Point!ケイカル板の多くは耐衝撃性・耐水性にも高い
ロックウールもケイカル板同様不燃材に指定されている原料です。
ロックウールの最大の特徴は耐熱性でも耐衝撃性でもなく、「吸音性能」にあると言えるかもしれません。
実際に「遮音室」などの内装材としてロックウールは広く使用されております。
ホルムアルデヒドなどの問題が一時期話題になった時期もありますが、現在製造されているロックウール製品はホルムアルデヒドが含まれている製品はほぼありません。
防火構造としてケイカル板を用いる際のポイントは、使用するケイカル板が「防火構造対応認定品」であることがまず重要じゃ。
基本的に一般住宅の建築において防火構造としてケイカル板を用いる場合、最も多い用途としては
●軒裏
●キッチンの下地
などへのケイカル板の使用じゃろう。
特に「軒裏」は早い速度で火がまわるので、防火構造へ対応する為にケイカル板の使用を検討している場合は不燃材となる厚さ5ミリ以上のケイカル板を使用することが重要となります。
※Point!不燃材に認定されている製品で対応すること
店舗物件などの場合は使用用途によって飲食店などで使用する場合は厨房の内装材にケイカル板を使用するケースもあるでしょう。
またオフィスビルなどの場合はテナントの天井や給湯室など火気の発生を伴う部位でも同様です。
またスプリンクラー設備などを伴う駐車場などの「天井材」にも珪酸カルシウムを含有するボードが張られるケースもあります。
消防法では、火災の発生時に火災の広がりを抑制する目的で「内装材」や「下地材」に不燃材を指定するケースや不燃材を使用することで規定の緩和措置を講じているケースもあるので、これらの用途によって不燃材の使用は大きな付加価値をもつ可能性がある点は覚えておきたいですね。
※Point!不燃材を使用することでメリットを得られるケースも
防火区画では耐火性能を保持する内壁材の使用が義務付けられております。
ケイカル板は防火区画エリアでも使用される不燃材ですが、耐火基準が適合するかどうかは製品によって異なります。
特に面積区画の緩和規定では準不燃材を使用するケースよりも内装・下地ともに不燃材を使用した場合は大きな緩和措置を受けることができます。
※Point!防火区画の面積区画規定では不燃材の使用で緩和措置が受けられる
但し、貫通処理を行う部分に関してはモルタルやグラスウールなどによる隙間の充填処理を施す必要がでてくるケースもあります。
防火区画の指定制限を受けているエリアでケイカル板を使用する場合の注意点をチェックしておきましょう。
防火区画では「貫通処理部分の処理材の材質」にも注意が必要です。
市販されている貫通板は不燃材とは限りません。
※Point!防火区画の貫通処理材は要チェック
厳しい制限を受けるエリアですから貫通板はもちろんダクト周りの処理も法に基づいた処理を行うことが必要です。
防火区画でケイカル板を使用する場合は製品の詳細を把握した上で使用する建築資材を選択することが大切です。
ケイカル板の寸法はメーカーによっても異なります。
ここでは一般的に市販されいるケイカル板の標準寸法についてチェックしていきましょう。
市販タイプで標準的に準備される寸法は主に以下の3種のサイズです。
【ケイカル板の標準寸法(mm)】
●910×910
●910×1820
●910×2420
以上3寸法が広く製品化されている寸法ですが、メーカーによっては切れの良い「1000mm×2000mm」の製品もあります。
ケイカル板は基本的に、カッターなどで簡易的に寸法の加工を施こすことができる建築資材です。
そのため、特殊なサイズの注文は、メーカーに直接注文を行うのが基本です。
ケイカル板の厚さは多くの種類がありますが、「原則2mm単位」での扱いとなっているのが通常です。(奇数単位は少ない)
一般的に市販されている標準的な厚さは以下の5種の厚さです。
【ケイカル板の標準寸法(mm)】
● 4mm
● 6mm
● 8mm
● 10mm
● 12mm
尚、4mmのタイプは不燃材の規定から外れる為、不燃材として内装や下地に使用することはできません。
ケイカル板の重量に関しては標準的な規格は存在しません。
これは配合成分比率の違いや化粧ケイカル板など表面に塗装などの処理が施している場合などでも若干の違いが生まれる為です。
一般的なケイカル板の場合は平米あたりの重量として厚さが6mmのタイプで「4.6kg~5.2kg」あたりが相場です。
ですから10ミリ以上の厚さのタイプの場合は大きい寸法のケイカル板の場合はかなりの重量となります。
※Point!重量は6mmのタイプで4.6kg~5.2kgが相場
住宅の軒やトイレの壁、ベランダの天井などにケイカル板を使用する場合は、使用するケイカル板の重量にも注意しましょう。
重すぎる壁材は家の躯体にとっても負担となります。
※Point!重すぎる壁材はご法度
しっかりとした下地処理をしていない状態で重量のある化粧ケイカル板などを貼り付けているケースも見かけますが、長期的に見るとこれは負担となります。
キッチン周りなどにケイカル板を使用する場合も不燃材にこだわる必要はありません。
シーラーなどで塗装の浸透と防水処理を施すだけでも十分対応可能です。