【リフォーム1000】珪藻土と漆喰の違い・塗り方・下地処理

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◆珪藻土と漆喰の違い・塗り方・下地処理の解説

◆珪藻土とは?

 珪藻土とは、不等毛植物門珪藻綱に属する単細胞性の藻類の一種である珪藻の殻の化石の堆積物の事じゃ。

 一般的に湖や沼地などで見かけるコケは、この藻類に属する「珪藻の集合体」なのじゃよ。

 このコケ類は長期間の年月を得て増殖と死滅を繰り返し、死滅した植物性プランクトンや珪藻類の死骸は水底に沈殿し徐々に堆積する。

 そして、水底で徐々に堆積した死骸の中に含まれている有機成分は時間とともに分解され最終的に「二酸化ケイ素」を主成分とする殻のみとなり化石化して地中に残ることになる。

 珪藻土は、珪藻の有機物が分解された後に残る被殻が大量に蓄積し、地層の大半の成分が二酸化ケイ素を主とする堆積物で構成されている土が建築用の内装の壁や外壁の壁材などで使用される珪藻土として扱われておるという訳じゃ。

蓄積した天然の珪藻土【画像】

 また、珪藻土は濾過性能が高いことから濾過装置の補助剤としての利用や、日本では古くから焼き魚などの調理器具として使用されてきた七輪などの素材としても珪藻土が利用されておるのじゃよ。

◆珪藻土の効果・働き・特徴

 珪藻土の元となる珪藻の殻は表面に小さな穴(小孔)が無数に点在しており、珪藻土は大量の水分や油分を保持することが可能であり、珪藻土単体の重さは堆積単位で見ると他の建築壁材などと比較してもかなり軽量の部類に入ります。

 その為、珪藻土の性質である保水性を考慮し、室内の調湿効果や湿気による防カビ効果が期待され壁材として適用されている場合も多くあります。

 また、珪藻土の塗り壁は吸湿性が高いだけでなく「消臭効果」も期待できる事から、近年ではペットがいる家庭におけるリフォーム時の内装用の壁材としての需要も高くなってきております。

珪藻土の効果・働き・特徴【画像】

 尚、珪藻土は漆喰などとの相性も良く、単体では壁材として使用することができない珪藻土の糊剤の役割を漆喰で補い、漆喰のやや湿った表面加工と珪藻土の機能性を持ち合わせた壁材やクロスがホームセンター等でも容易に手に入るようになっております。

◆珪藻土の塗り方

 珪藻土の塗り方の基本は、特に珪藻土専門の特殊な技術が必要という事はなく、一般的な左官技術があれば珪藻土を扱うことは難しいことではありません。

 珪藻土は外壁等で広く使用されるモルタル材や土壁などと比べると漆喰と同様に比較的容易に塗り壁の施工を行うことが可能である点も珪藻土の魅力の一つと言えるでしょう。

 塗り方は材料をしっかり練り込んでコテにとり壁面に載せた珪藻土をコテで均等にならしながら埋め込んでいく基本的な塗り方で問題ありません。

 尚、壁材として珪藻土を塗る場合、表面仕上げの塗り方によっては壁面のデザイン性、壁面の表情が異なる為、左官工の技術力が大きく現れる傾向があります。

 しかし、近年ではDIY関連の技術書籍なども豊富に販売されておる為、ホームセンターなどで個人が珪藻土壁材を準備し、素人の方が塗り壁の施工を行うケースも多く見られるようになってきているのもひとつの特徴と言えます。

DIY人気が高まる珪藻土【画像】

 長年珪藻土を扱ってきた専門職である左官工には技術は及ばないとしても、塗り壁は2つとして同じものは存在しないため、逆に個性ある仕上がりが魅力になる可能性もあるのです。

◆珪藻土の下地処理

 珪藻土の左官を行う場合は、まず珪藻土を塗る前に下地を整えておく必要があります。

 珪藻土の下地処理は、基本的に凸凹した部分や石膏ボードなどの場合はボードの繋ぎ目部分にあたる溝を「下地材」でしっかりと埋め、表面を整えておく程度の下地処理で問題ありません。

 一般的な下地材としては「プラスターボード(石膏ボード)」があります。

 プラスターボード(石膏ボード)とは、焼き石膏の粉末を主体とした成分に鋸屑やパーライト、白雲石などの粉末を混ぜて水で練り特殊な厚紙で成型した板材料で主に下地材などで広く使用される建築資材です。

下地処理材プラスターボード(石膏ボード)【画像】

 プラスターボード(石膏ボード)は比較的価格が安価であり、かつ防火性が高いという利点もあるため、壁材や天井材などに広く利用されております。

 下地処理では、壁紙のクロスや土壁などの表面に下地材を全面的に貼り付け、その上から直接珪藻土を塗りつけていく方法もあります。

 下地となる部分が土壁やコンクリートなどの場合は、「ひびわれ」がないかを細かく確認し、ひび割れや欠けがある場合は、下地材で丁寧に慣らし珪藻土を塗る前に出来る限り表面を平らに仕上げておきます。

◆糊剤によって左右される性能

 珪藻土を内装などの壁材として利用する事を検討している場合は、珪藻土を建築資材として利用する為の「つなぎの糊剤」についての知識を身につけておくことが重要です。

 珪藻土は単体で壁に塗りこんでいってもバサバサと地面に落ちてしまうため、建築用に使用する場合は粘着性をもたせる働きを持つ、つなぎ用の糊剤と混ぜあわせて使用します。

 しかし、珪藻土は調湿性や防カビ性等の効果が期待できる壁材ではありますが、この糊材として使用する材料によっては、珪藻土が持つ機能性を十分に発揮できなくなる可能性もあるのです。

 主な珪藻土の糊剤としては「石灰」「漆喰、粘土、石膏、アクリル系合成樹脂接着剤」などが広く利用されております。

 漆喰や粘土などの素材を糊剤として使用する場合は、期待される性能や表面の自然な仕上がりに大きな影響を与える事はありません。

 しかし、合成樹脂などを糊材として混ぜ込んだ場合は、珪藻土の粒子の小孔(空気層)を糊材が埋めてしまう為、珪藻土が持つ高い吸湿性や脱臭効果を十分に発揮する事が難しくなります。

内装に使用する場合の糊剤の注意点【画像】

◆珪藻土と漆喰の違い

 よく上がる疑問のひとつに珪藻土と漆喰はいったいどのような違いがあるのか?という問いがあります。

 珪藻土と漆喰の違いがイメージしにくい方の為に、ここでは珪藻土と漆喰の成分の違いをまとめておきます。

◆珪藻土はひび割れしやすく単体で使用はできない

 珪藻土はここまで解説してきた通り、珪藻の有機物が分解された後に残る被殻が大量に蓄積した層に含まれる土の事を指しておる。

 珪藻土は建築資材のひとつではあるのじゃが、現実的にはある意味ただの土であることに変わりはないのぉ。

 その為、そのまま天然の珪藻土を建築用の壁材として使用すると乾燥した際にボロボロと剥がれ落ちてくる為、建築資材として用いられている珪藻土は壁に付着する為の糊剤を配合しなければいけないのじゃよ。

珪藻土と漆喰の違い(比較)【画像】

 対して漆喰は日本の伝統建築物でもあるお城などにも使用されてきた伝統的な左官材料じゃ。

 漆喰の原料は「消石灰(水酸化カルシウム・化学式はCa(OH)2)」と呼ばれるカルシウムの水酸化物であり単体で施工が可能となっておる点の違いがあるのじゃ。

 尚、前述したように、単体では壁材として使用することができない珪藻土は漆喰との相性が良いことでも知られておる。

 珪藻土の糊剤の役割を漆喰を配合することで補い、漆喰のやや湿った表面加工と珪藻土特有の調湿効果や消臭効果の機能性を持ち合わせた壁材やクロスが販売されておる。

 珪藻土の壁を作りたい場合、塗り壁では左官工の技術が必要となる。

 しかし、壁紙やクロスであれば、将来的に張り替えを行うことも可能でありメンテナンス面も考慮すると一考の価値はあると言えそうじゃ。

◆漆喰が徐々に固まるメカニズム

 日本では昔から土壁の上に漆喰で仕上げを施す施工技術が多く行われてきております。

 壁材としての漆喰は施工時にはそれほどの硬化はありません。

 しかし、漆喰の施工後には水酸化カルシウムが長い年月をかけて大気中の二酸化炭素を吸収し炭酸カルシウムを生成します。

 その為、漆喰の土壁は年月が経過するほど硬さが増していくという特徴があります。

 尚、近年では珪藻土の特性と漆喰の特性を活かした「固形剤に漆喰を配合する珪藻土」も販売されるようになっており、注目を集めております。

◆珪藻土と発癌性

 建築資材として珪藻土の人気が高くなる一方で、話題に上るようになった問題のひとつに珪藻土の発癌性に関する問題がある。

 発癌性を持つ壁材としては日本ではアスベスト(石綿)が小中学校の体育館等の建材として広く使用されていた事で大きな問題となった事があるのぉ。

 では、健康建材として注目を集めてきた珪藻土は本当に発癌性を持つ建材と言えるのじゃろうか?

◆国際ガン学会(IARC)の発癌性に関する基準

 珪藻土の発癌性が危険視されるようになった背景は、珪藻土を焼成した際に生じる「結晶質シリカ」が国際ガン学会(IARC)の発癌性に関する基準のⅠ類に分類された事が背景があります。

 Ⅰ類に含まれる建築資材としては前述したアスベスト等も含まれますが、この「結晶質シリカ」を長期間かけて体内に吸収した場合に癌の要因となる危険性があるという事は事実です。

 しかし、壁材などに使用されている珪藻土は「非結晶質シリカ」と呼ばれるIARCでは「Ⅲ類」に分類される材料です。

IARCの発癌性に関する評価基準【画像】

 住宅建築や室内リフォームなどで使用されている塗り壁等に使用する珪藻土から発癌性を含む基準を満たす数値が検出されることはかなり困難であり、現実的な見解では珪藻土が発癌性を含む建築資材であると診断するのはかなり非現実的であるというのが現在の見解です。

 とは言え長期的な視点で見て「発癌性がゼロ」という訳でももちろんなく、これから数十年というスパンを得て徐々に発がん性の可能性を検証していくことが重要であるという認識は変わりありません。

◆発癌性を持つかどうかは数年の検証が必要

 珪藻土が仮に発がん性を持つ建築材料であったとしても、発がん性物質としての認定を行うには長年に渡り調査・検証を行いしっかりとした事実を元に判定を下すことは非常に困難な事です。

 これは癌の原因となる危険因子となるものが、化学物質だけでなく病気や生活習慣など、性ホルモンに至るまで様々な方向性が考えられている為です。

 全く違う要因が関与しているにも関わらず珪藻土の壁材の家に住んでいた為に珪藻土が癌の原因と決めつけることは当然できませんし、発がん性物質として認定をするには多くの母数が必要です。

 日常生活の範囲でも癌の原因物質として危険視されている物質が多くある中、珪藻土に対してのみ過剰な反応を示す事もおかしな話しと言えるかもしれません。

 珪藻土に関わらず建築材料には利点と欠点がある点を理解し、自己責任で建築素材を選択していく事が大切です。