シーリングとは、気密性・水密性を高めることを目的としてサッシやガラス周り、カーテンウォール、建築部材の目地や外装材の隙間を封印することです。
このシーリングに用いられる充填材のことをシーリング材もしくはシール材と呼んでおります。
シーリング材は建築物の防水にとって重要な防湿防水材であり、リフォーム作業では欠かせない材料であると言えます。
シーリング材にはパッキンやガスケットなどの「定形シーリング材」と、基材と硬化剤が あらかじめ混合された製品をコーキングガン等で充填したり、液体状の原料を現場で加工しペースト状の充填材とする「不定形シーリング材」があります。
定型シーリング材は、あらかじめシーリング材がガスケットやひも状などに成形されている製品のことです。
使用の際は、充填部の断面が均一である場合に、被着物に密着させ押しつけながら施工します。
不定形シーリング材は、一般的にシーリング材として広く認識しているもので1成分形シーリング材と2成分形シーリング材に分類されます。
1成分形シーリング材とは、シーリング材の基材と硬化剤をあらかじめ混合した製品のことです。
専用ガンから充填されたシーリング材は、空気中の酸素や湿気と反応し硬化します。
尚、非硬化材である油性コーキング材・油性シーリング材も、この1成分形シーリング材に分類されます。
2成分形シーリング材は、1成分形シーリング材とは異なり施工直前に現場でシーリング材の基材と硬化剤を練り合わせて使用するシーリング材です。
熱や地震などで変形する部材の隙間や目地をワーキングジョイントと言います。
本来シーリング材の施工を行う場合は防水性能が高い3面接着で施工を行うことが基本です。
しかし、このワーキングジョイントにシーリング材の施工をする際は、目地が伸縮した際にシーリング材が破断しないように2面接着で行うことが原則です。
ですからワーキングジョイントでは、バックアップ材やボンドブレーカーを使用するなどして目地の底面にシーリング材が接着しないような工夫を施す必要があります。
2面接着による施工を行うことで、目地の伸縮に追従する処置が可能になるということです。
尚、コンクリートの打継ぎ目地や動きが明らかに小さいとされる目地では、3面接着で施工を行い接着性が十分確保できるように注意して作業を行う必要があります。
シーリングの本来の意味は「秘密の保護・封印」という意味合いを持つ言葉です。
また、コーキングとは木造建築物などの「隙間を塞ぐこと」を意味する言葉です。
尚、建築現場で使用されているコーキング材は「油性コーキング」などを原料とするものでシーリング材同様に目地や隙間を埋める防水材です。
しかし、シーリング材は表面及び内部も硬化しますが、コーキング材は表面は硬化し皮膜を形成するものの内部が完全に硬化することはありません。
現在の建築施工におけるシーリング材とコーキング材の違いは、「硬化するか非硬化であるか」という点で分類がなされており、コーキング材はシーリング材の一種として扱われるようになってきております。
シーリング材は施工時の皮膜及び内部の硬化のされ方によって「湿気硬化」「乾燥硬化」「非硬化」「混合反応硬化」の4つの硬化機構区分に分類されます。
尚、DIYのリフォーム現場でも広く使用されているシーリング材と専用ガンなどに見られる1成分形シーリング材は「湿気硬化」「乾燥硬化」「非硬化」があり、施工現場で調合する2成分形シーリング材は「混合反応硬化」です。
また、硬化区分ごとにシーリングの原料、主な成分によって幾つかの種類のシーリング材に分類されます。
【シーリング材の種類一覧表】 | |||
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成分形 | 硬化機構区分 | シーリングの種類 | |
1成分形 | 湿気硬化 | シリコン系 | |
変成シリコン系 | |||
ポリサルファイド系 | |||
ポリウレタン系 | |||
乾燥硬化 | エマルジョンタイプ | アクリル系 | |
SBR系 | |||
溶剤タイプ | ブチルゴム系 | ||
非硬化 | 油性コーキング材 | ||
シリコーン系マスチック | |||
2成分形 | 混合反応硬化 | シリコン系 | |
変成シリコン系 | |||
ポリサルファイド系 | |||
アクリルウレタン系 | |||
ポリウレタン系 |
シリコン系シーリング材とは、オルガノポリシロキサンを主成分とするシーリング材です。
シリコン系シーリング材には「1成分形」と「2成分形」があり、耐熱性、耐候性、耐久性に優れた性能を示す特徴があります。
施工後は表面に仕上材が接着しにくいため、上塗り塗装には向かずシリコン系シーリング材に上塗り塗装を施す場合は逆プライマーが必要となります。
また、同様に塗装工事終了後にシーリング材を塗膜の上に充填する後打ちシーリングの場合も接着性が低いため接着性には注意が必要となります。
シリコン系シーリング材の主な用途は水回り周辺の他、ガラスやカーテンウォール、建物外壁の外装パネル、屋根など多岐に渡ります。
ポリサルファイド系シーリング材とは主鎖にウレタン結合をもち末端にSH基を保持するポリマーである「ポリサルファイド」を主成分とするシーリング材です。
ポリサルファイド系シーリング材にはシリコン系同様1成分形と2成分形があります。
耐熱性、耐候性は比較的安定した性能を持ちますが、耐久性は他のシーリング材と比較するとやや弱い特徴があります。
2成分形のポリサルファイド系シーリング材はカーテンウォールや建物外壁、コンクリート壁などに使用可能ですがムーブメントの大きな金属カーテンウォールの目地などに使用する際は注意が必要です。
1成分形のポリサルファイド系シーリング材は、主に石材の目地などに使用されるシーリング材で、2成分形の石材の適合性による難点に対応します。
また、ポリサルファイドは高い耐油性を持つことから耐油性が求められる金属器具やダクトのつなぎ目などにも使用されるシーリング材です。
アクリルウレタン系シーリング材とはアクリルポリオールを用いた「ポリウレタン樹脂」を主成分とするシーリング材です。
アクリルウレタン塗装材は自動車の塗装などで使用されている成分ですが、建築用のアクリルウレタン系シーリング材は金属性建具や笠木、建築外壁などで使用されているシーリング材です。
アクリルウレタン系シーリング材は施工時の気温や湿度の影響を受けるため、施工時はシーリング材が発泡しないように注意する必要があります。
シーリング材の耐用年数は、一般的に7年~8年程度であると言われております。
しかし、シーリング材の防水機能を考慮すると5年程度の耐久性が限界であると考えたほうが安全です。
実際、建築用シーリング材の保証期間は更に短い3年保証が基本です。
実際に3年程度で防水機能が低下し漏水をおこすようなケースは稀ですが、環境によって経年劣化の度合いも異なるため理想は3年おきに補修工事、長くても5年おきに補修工事を行うように計画しておくと安心に繋がります。
尚、新築住宅の10年保証は「品格法」に基づく保証年数であり、実質的な耐用年数とは乖離しているものもあります。
そのため、付帯設備に関しては設備ごとの耐久性に基づき保証期間が定められております。
シーリング材の防水機能は、どれほど良い状態で保管されている建築物であっても経年劣化を避けることはできません。
シーリング材は建築防水の要ですから、シーリング材の補修工事などはできる限り短いスパンで補修工事を行っていくことが大切です。